平成10年度 「日本海沿岸地域連携整備計画調査」

 

調査の目的

 日本海沿岸地域は、豊かな自然、対岸諸国との交流も含めた多彩な歴史・文化、産業・技術の集積など、多くの優れた地域特性を有しながらも、太平洋側と比べ、経済的格差、社会資本の整備の遅れ、山村の荒廃や中山間地域等の機能低下といった問題を抱えている。

 しかしながら、国民の価値観の変化・多様化やグローバリゼーションの進展、少子・高齢化、高度情報化の進展などの我が国の潮流の変化、あるいは冷戦構造の崩壊や東アジアの経済発展による環日本海地域のポテンシャルの高まりを背景として、日本海沿岸地域において、新たな地域づくりの可能性が期待されており、本地域が我が国または環日本海地域の中で果たす役割を踏まえ、これを実現するための交流・連携方策について検討した上で、社会資本整備等のあり方を検討することを目的として実施した。

 

調査の概要

 本調査は、国土庁及び農林水産省、通商産業省、運輸省、建設省の5省庁が共同して国土総合開発事業調整費(調査の部)にて実施した調査であり、実施にあたっては別表の調査委員会を設置した。

(平成9年度)

 ヒアリングアンケート資料収集等により調査対象地域の現状を把握し、生活、経済、都市、交流の4つの機能についての課題及びポテンシャルを整理し、特に都市機能及び交流機能の強化の観点からの日本海国土軸の将来像について検討した。

1.重層的な地域連携の推進

 多種多様な地域連携軸が連鎖することにより、日本海沿岸地域を縦方向に結ぶ国土軸が形成される。この縦方向の国土軸は、太平洋側・内陸部との横断軸と対岸諸国との国際交流圏に連結し、さらに機能集積を高めていく。

2.環日本海交流の先導

 地勢的優位性を活かし、日本におけるゲートウェイとして、環日本海の大交流時代を先導する

ことにより、日本海沿岸地域の一体的発展を可能にするとともに、我が国の資源・エネルギーの

安定供給の確保、地域の安定の確保に貢献する。また、地域主導型の国際交流を進め、経済交流

にとどまらない多様な交流(文化交流、知的交流、環境面の協力等)を行い、新たな国際交流の

姿の先例となる。

(平成10年度)

 9年度の検討に加え、有識者ヒアリング、アンケート調査を通じて、日本海沿岸地域の整備に資する

地域連携及び日本海交流の展開方向について検討し、これを推進するための主要施策を示した。

<主要な施策例>

1.重層的な地域連携の推進に係る主要施策

 1)地方中核都市と周辺市町村の連携により拠点となる都市圏の形成

 2)近接する同規模都市間の連携による都市機能の充実

 3)中小都市と中山間地域等の連携による多自然居住地域の形成

 4)太平洋沿岸や内陸部との連携による集積の活用

 5)拠点的な都市圏間の連携による高次都市機能の充実

 6)遠隔地間または超広域の連携による地域連携の多様化・広域化

 7)全地域を舞台とする各種経済活動の活発な交流・連携による産業の振興

2.環日本海交流の先導に係る主要施策

 1) ローカル(日本)・トゥ・ローカル(対岸)により対岸地域の多様性に対応した交流の推進

 2)多様な環日本海交流による個性的な地域づくりの推進

 3)環日本海地域として共同で取り組む必要性の高い交流分野の推進

 4)国際観光の促進による環日本海地域の交流人口の拡大

 5)対岸諸国との経済交流の拡大に向けたサポート体制の整備

 6)日本海沿岸地域におけるゲートウェイ機能の向上による地域振興

 

委員名簿

委員長   伊藤 滋    慶應義塾大学 環境情報学部 教授

委 員   片倉 もとこ  中央大学 総合政策学部 教授

 〃    今野 修平   大阪産業大学 経済学部 教授

 〃    宮口 とし廸*) 早稲田大学 教育学部 教授

 〃    藤田 暁男   金沢大学 経済学部 教授

 〃    島崎 敏一   日本大学 理工学部 教授

 〃    西澤 輝泰   新潟大学 経済学部 教授

*)「とし」は、にんべんに同

注)肩書きは委員就任時

 

 

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